「三女派」との記載について
一審判決では、
①わたしがオウム真理教の教祖であった父の三女であり、名目上であれ教団運営を行う地位に就いた
②公安調査庁や警察庁の報告書に、下の弟(二男)を母がアレフに復帰させようとさせたことについてわたしが反対し、それを発端としてアレフ内で内部対立が生じたと記載されている
③『止まった時計』にもそれを一部裏付ける記載がある
ことを理由に、オウム真理教の関係団体の中に、わたしの立場に同調する信者がいると一般の読者は認識しているといえ、わたしの社会的評価を低下させない、とされました。
しかし、控訴審判決では、
①わたしがオウム真理教の教団運営を行う地位に就いたのは1996年と20年以上も前のことで、わたしは当時13歳に過ぎず、それ以降はわたしがオウム真理教の関係団体に所属しているという報道はない
②公安調査庁や警察庁の報告書の記載は、わたしがオウム真理教の関係団体の構成員であることを意味するものではない
③「○○派」という表現は、○○の人物がその集団を象徴する構成員であることを意味するものである
として、滝本弁護士の上申書の記載は、わたしの社会的評価を低下させるものだと認定し、名誉毀損と認定しました。
「オウム集団は、三女派などを含め、広く社会的に監視されていくべき」との記載について
一審判決では
観察処分に付されているアレフにわたしの立場に同調した信者らが存在することが指摘されており、これを踏まえわたしの社会的評価が形成されている
から、広く社会的に監視されていくべきとの記載は、わたしの社会的評価を低下させない、とされました。
控訴審判決では、
一般の読者は、わたしがオウム真理教の関係団体に所属していると認識していたとは認められない
から、わたしが所属する集団がオウム真理教の関係団体であり、社会的に監視されるべきという記載は、わたしの社会的評価を低下させる、とされました。
「偽りの脱会名目の『お付きの人』の支援で生活」「オウム集団から離れているものではなく、監視が必要」との記載について
一審判決では
① 新聞報道や四女の著書、公安調査庁や警察庁の報告書によっても、オウム真理教の関係団体から脱会したとされている。わたしがオウム集団から離れていない者の支援を受けて生活しているという社会的評価は形成されていないし、わたしがオウム集団から離れていないという社会的評価も形成されていない。
から、わたしの社会的評価を低下させる、としました。この点は滝本弁護士がわたしの名誉を棄損したことが認められていました。
控訴審判決では、
①一般の読者が、外形上オウム真理教の関係団体から脱会したとされているが、実際には離れていない者からわたしが支援を受けているという認識を持っていたとはいえない
②新聞報道は10年以上も前の報道で、現在も同様の状況にあると一般の読者が認識しているとは言えない
③わたしがオウム真理教の関係団体に所属していると、一般の読者が認識していたとは認められない
④わたしの監視が必要であるという社会的評価が形成されていたとはいえない
ことから、「偽りの脱会名目の『お付きの人』の支援で生活しており監視すべき」という記載は、わたしの社会的評価を低下させる、としました。
「山田らの集団も三女派というべき」との記載について
一審判決では
①観察処分が付せられているアレフにおいて、わたしの立場に同調した信者らが存在したことがあり、その中には山田らの集団が存在することが報告されている
②それを前提としたわたしについての社会的評価が形成されている
③三女派という表現は、わたしがオウム真理教を事実上承継した団体の中で指導的な立場にあることまで示すものではない
から、わたしの社会的評価は低下しない、とされました。
控訴審判決では、
①わたしが山田らの集団を含めたオウム真理教の関係団体に所属していると一般の読者が認識していたとは認められない
②わたしが、観察処分に付されているオウム真理教の関係団体の構成員であることを示すものである
ことから、わたしの社会的評価を低下させる、とされました。
名誉毀損に該当し責任まで問うにはどんな要件が必要なの?
名誉毀損は、
① 表現が社会的評価を低下させる
ことが必要とされます。これは、その表現が「真実」であろうと、「真実ではな」かろうと、社会的評価を低下させると、名誉毀損になることになります。
しかし、名誉毀損に該当する事実が公共性をもち、もっぱら公益を図ることが目的である場合に
② 表現内容が真実である
か、あるいはそれが真実でなくとも、
③ 表現内容を真実と信じた相当の理由がある
場合は、名誉毀損には該当し、違法ではあるけど、「故意又は過失がない」ということで、責任が問われません。
控訴審判決では、これまで指摘した通り、問題となった表現全てについて、わたしの社会的評価を低下させるものであるとしました。
さらに、以下のように、全てについて真実ではないとしています。
①わたしがオウム真理教の関係団体の構成員であったと認めることはできない
②オウム真理教の(実質的な)信者から支援を受けているという事実を認めることはできない
③わたしが山田らの集団に入会したと認めるに足りる証拠はなく、また山田らの集団がわたしを象徴する信者らの集団の一部であることについて証明があったとはいえない
このように滝本弁護士の記事中、わたしが問題とした部分はすべて真実ではなく、わたしの社会的評価を低下させるものである、つまり、違法であると認められたのです。
残念だったのは、真実ではないけれども、滝本弁護士の主張が③の、真実だと信じたことに相当の理由があるとされたことです。
弁護士であり、「オウム真理教問題の第一人者」を名乗る以上、滝本弁護士はわたしなどの一般人と比べて高度な注意義務を負うと思います。つまり、より慎重さと正確さが求められるはずですが、その点を裁判所が考慮してくれなかったのは、残念なところです。
しかし、これで滝本弁護士は、「三女派」や、わたしが偽りの脱会名目の「お付きの人」の支援で生活している、山田らの集団は「三女派」などという、真実に反することを書くことはできなくなりました。
真実ではないと指摘された判決を読んだ以上、真実であると信じる根拠もなくなったからです。
これで少しでも、社会で生きやすくなったらいいなと思っています。
――この判決を踏まえて、滝本弁護士には、わたしやわたしの家族に関するブログ記事をすべて削除していただきたいです。削除なさらないならば、わたしたちに関するブログ記事の内容についてはすべて真実であるとの証明をしていただきたいと思っています。
松井武先生には、「あなたが判決に対し何もコメントしないと、あなたを心配している人はどう思うだろうか」「生きろ」と優しく叱ってくださいました。
松井先生は、わたしの体調が悪かろうが関係なく、必要なアドバイスを下さいます。そんな中で、一生懸命第一審判決、そして控訴審判決を読み、自分なりにまとめたつもりです。
控訴審判決の法廷にはわたしを心配して来てくださっていた方がいたと松井先生からうかがいました。ありがとうございます。
いつもいろいろと気遣って下さる皆さま、本当に感謝しております。ありがとうございます。
皆様方の叱咤激励を元に身体を元気にさせて、少しでも頑張りたいです。
今後ともよろしくお願いいたします。