2022年3月4日、わたしがフジテレビと妹を名誉毀損で訴えていた裁判の判決がありました。
この事件は、2015年3月 20日、わたしが自著『止まった時計』を出版した直後、フジテレビのSuper Newsの番組内で、「松本聡香」との仮名を用いている父の四女でありわたしの妹と、メインキャスターの安藤優子氏との間で行われたやりとりを、名誉毀損として聡香と安藤氏、番組を放送したフジテレビを訴えたものです。
聡香:「本を少し読んだけれど」「よくここまでうそが付けるなっていうぐらい」「結構でたらめというか」「私が知っている事実とは違うものでした」(この中で「本」というのは「止まった時計」のことです)
安藤氏:一度うなずいてから、念を押すように、「本の内容がでたらめ」とでたらめという表現のみを引用して妹に確認を求める。
聡香:「はい」
この「嘘」「デタラメ」という聡香の言動を放送したフジテレビの報道によってわたしはでたらめを書く嘘つきとして扱われました。それだけではなく、実の妹が『止まった時計』を嘘でたらめ言っているから買ってはならないという、不買運動へもつながりました。
どこが嘘で、どこがでたらめなのか具体的な箇所が指摘されたら、わたしはその点についてお答えすることができます。お問い合わせをいただいても、わたしが知る事実をお話することができます。
しかし、放送では「少ししか読んでいない」のに、よくここまで嘘がつける、結構でたらめだったとし、本全体が嘘で成り立っているかのような印象を与えられては、どうすることもできません。
思い出すのもつらい過去を振り返り、資料を集め、文字通り心身を削る思いで書き上げた本が「でたらめ」とされたこと、わたしが嘘つきにされ、デタラメを書く人間だとされたことに、今でも癒えぬ傷が残っています。
わたしは上記の発言について、名誉毀損だと聡香らを訴えましたが、残念ながらわたしの請求は認められませんでした。
この判決に対しては、いろいろと言いたいことがあります。その点に関しては、別の記事で書かせていただきたいと思います。
これまで妹が何を言おうと、何をしようと、本人が実名を表記するのがいやだということであればそれを守ろうとしてきました。しかし、調べればネットに出ていますし、彼女ももう32歳です。物事を表現するときには自分の言動に責任をもたなければなりませんし、責任を持てる年齢です。仮名に隠れて無責任なことをいうことは決して許されないと考えています。
今回は、この判決を受けてフジテレビが3月4日、FNNプライムオンラインに掲載した記事について述べさせていただきたいと思います。
「松本智津夫元死刑囚の三女が」「フジテレビの報道番組で、自分が執筆した本にうその事実が書かれているかのような放送をされて名誉を傷つけられたなどと訴え」「東京地裁は、三女の本について『松本元死刑囚が首謀者であることなどについて、客観的事実と異なる記述をしている』と認め、名誉毀損は成立しないとして三女の訴えを退ける判決を言い渡した」
というのが、記事の内容です。
驚いたのは、この記事は、完全に聡香の存在を消しています。
この記事には、何が争われたのか事実関係が記されておらず、『止まった時計』について妹が「嘘」「でたらめ」だと発言したことが問題となったとは分かりません。
また、請求は棄却されたものの、番組内での発言は名誉毀損にあたると判決では判断されていますが、そこら辺の不都合な事実にも触れていません。
わたしが、父をいわゆるオウム事件の首謀者として扱うフジテレビの報道番組に対し、名誉毀損であるとして訴えたかのような印象を与える内容となっており、まさに悪意をあおる偏向報道です。
もう一つ、この報道には大きな問題があります。名称の問題です。
裁判でわたしは実名で争っています。また、本も実名で書いています。この記事も実名で書いています。
にもかかわらず、このフジテレビの記事はわたしの名前を書かず、「松本元死刑囚の三女」と表記しています。「麻原」「松本元死刑囚」と聞けば、誰もがあのオウム真理教や、あの地下鉄サリン事件を思い浮かべ、ああ、あの「人殺しの三女」かと思うことでしょう。
松本麗華というひとりの人間としての人格を剥奪する、「松本元死刑囚の三女」という表現。
フジテレビはそうやってわたしに対する差別感情を引き起こすかのような記載を行い、記事が転載されたYahooニュースのコメント欄には、わたしに対する誹謗中傷であふれています。
突き刺さり、わたしをずたずたに切り裂いていく言葉の刃。この気持ちや悲しみ、つらさ、怒りをどう表現したらよいのでしょうか。